仲間の本 ★ご紹介もれがあると大変失礼になりますので、ここに載せさせていただくご本は、ご贈呈いただいたものに限らせていただきます。


「うちゅういちのタコさんた」(国土社)  北川チハル

サンタ? そんなもんいるか! というお父ちゃんが作ってくれたツリーを見て、たまこちゃんは大泣きです。あんまり泣いたんで、お父ちゃんは、クリスマスプレゼントに何でも買ってくれるといってくれました。せっかくのチャンスだというのに、あらまあ、たまこちゃんったら……。

ほんとうにほしいものは、すぐそばにあったんだよね、たまこちゃん。
「ありがとさんです。ありがとさんです」というお父ちゃんのセリフが心に沁みる、ほかほか家族の物語です。

冬の読み聞かせに最適の一冊です。


「うつわや料理帖」(ラトルス) 
       あらかわゆきこ  写真 梶 洋哉
 

すてきな器に盛り付けられたお料理は、お店の常連さんから教わったそうです。ちょっと一品、酒の友だち、ごちそうの後のごはんなど……。簡単に作れそうな気の利いたお料理と器との融合は、さすが「うつわや」さんのオーナー。お見事です。お料理にまつわるエピソードもごちそうです。器の紹介もたっぷりあります。しあわせな気持ちになれる本です。

    うつわや  東京都渋谷区元代々木町10-5-101                    

第23集「アンデルセンのメルヘン文庫」

アンデルセンのメルヘン大賞受賞作品が5作、どれもすてきな絵がつけられて載っています。中谷詩子さんの『ママのエプロン』には、朝倉めぐみさんの絵がついて、ますます夢のあるお話になっています。少女のママへのあこがれと、ママにも苦手なものがあったんだというおどろき。それに対する思い……。余韻が残ります。

5冊の絵本が1冊になった、とてもぜいたくな本です。

「ねたふり」ポプラ社  小泉るみ子 作・絵

なにもかもとけちゃいそうな暑さの中での、おてつだい。北海道の野菜農家の忙しさと、みずみずしい野菜が本からとびだしてきます。子どもらしい考えでさぼってしまった少女をだれもとがめたりしません。みんなやさしいのです。

他にもポプラ社から、「わたしの好きな場所」「ふぶきのあとに」「秋は林をぬけて」「カッコウが鳴く日」「バスをおりたら……」は出版されています。

「カッピーのぼうけん」発行創栄出版・発売星雲社
  絵 ひまたまさみ

        点字 わしみよしえ・あべじゅんいちろう
        文 わたなべひろこ

この本は物語だけでなく、絵まで手で読みとることができます。かわいいかっぱの姿を、子どもたちはどう捉えたのでしょう。きっといっしょに川の中を泳ぐ気持ちになれたのでは、ないでしょうか。こんな本がどんどん出版されればいいのにと思いました。

「トモ、ぼくは元気です」(講談社) 香坂 直

和樹が、大阪の商店街にあるおじいちゃんの散髪屋に追いやられるようにやってきたのには、わけがある……。

「伝統の一戦」(たかが金魚すくいと思うなかれ)にかけた商店街の子どもの熱い思いに、和樹は乗れるか乗れないか。それにしてもお気楽な、いえ、悩みがあっても顔には出さず、笑いでふっとばす浪速っ子のど根性は、たいしたもんや。その洗礼を受けて、頑なまでに家族を拒んでいた和樹が、素直な気持ちで家族の元に帰れるようになるまでの感動物語。

「PRIDE(プライド) 共生への道 〜私とヒロシマ〜」
                   (汐文社) 李 実根

帯に、「戦前・戦後の時代に翻弄されながらも自らの信念を貫いた一人の在日朝鮮人の波乱の物語」と書かれています。在日並びに広島県朝鮮人被爆者協会会長でもある李さんの波乱万丈な体験話を聞き取り、またたくさんの資料を元に一冊の本にまとめあげたのは、フリーラーターの青木幸子さんです。とても重い内容を興味深く読めるのは、さすがだと思います。

「こわい! 青玉」(講談社) 石崎洋司 選

500余編の応募作の中から選ばれた怖い話が14編収録されています。この中に収録されている「七つ目のフシギ?」(上坂和美作)は、学校の七不思議です。一つ目は、魚に見える石。二つ目は、クモが一匹もいない。「なあんや、こんなの怖くないわ」とあなどってはいけません。七不思議ほどポピュラーで、しかも怖いものはないのです。決して耳を貸してはなりません。

同時に、「こわい! 赤玉」も出版されています。選者が違います。


「絶品 らーめん魔神亭」(ポプラ社)  たからしげる

「らーめん魔神亭」がシリーズになりました。<森のおくでひっそり営業中>に続く、<初恋はとんこつみそ風味>です。ひょんなことから森の中で絶品ラーメン店をひらいているランプの精アルの仮のご主人さまになってしまった奈緒。斉門とラーメンを食べているところに、元のご主人さまである伊太郎と坂田がやってきました。二人が100円を払ってラーメンを食べれば、アルのご主人は、二人になってしまいます。そうなれば、奈緒はアルにもう会えないどころか、二人はアルを利用するにちがいありません。

物語はこの後もまだまだ続くそうです。

「両手ばんざいのまねきねこ」(どりむ社) 木暮正夫

百年もの間、あちこちを転々としてきた招き猫が、ひょうんなことから、周平の手に渡りました。周平は、大阪にある「にこにこ商店街」の荒物屋の息子です。ショーウインドウに飾られた招き猫、骨董品としての値打ちはないものの、百歳という年は、伊達にとってはいません。それが証拠に……。招き猫の視点で書かれた暖かくて楽しい物語です。構成・セリフ・テンポ、すべて勉強になります。2005・5毎日新聞「読んであげて」にて連載されていた作品の単行本化です。挿絵を描かれている画家のこぐれけんじろうさんは、ご子息です。

「ぼくはアイドル?」(岩崎書店) 風野潮

手芸や料理が得意な少女タレントとして人気のあるミキの本名は、ヨシキ(美樹)。れっきとした男子中学生です。その秘密が、ヨシキの幼なじみの有沙の出現によってばれそうになる……のですが。一方、テレビ番組の司会をしている母親は、再婚相手の小説家である父親と別居中。原因は、カオルさんという美人……。男の子だからこう、女の子だからこうあるべきだという既成概念がいろいろな問題を引き起こしていく。人はそれぞれ、自分らしく生きていくことが一番だということが、感受性の強い年頃の読者に伝わることでしょう。



「子ども百景」ー自分探しの旅 (朝日新聞社)左海良


一言でいえば、「切り絵とエッセーで描く子どもの世界」です。学校や家庭での、子どもたちの日常が百景、慈しみのある文章で、また、躍動感のある切り絵で、いきいきと描かれています。本の中の子どもたちはどの子も、その子らしく光っています。子どもの本当の姿が、この本の中に詰まっています。そんな子どもたちを見守ってこられた先生の愛情をたっぷり感じることができます。


「水族館をまるごと楽しむ」(新風社)井上こみち 榊原茂

日本に水族館はいくつあると思いますか? 飼育係りのなるほど奮戦記や水族館のびっくり裏話などが、水族館の歴史や秘密と共に、この本の中にびっしりつまっています。珍しい魚や海の生き物の写真もたくさん収められています。水族館に何度も足を運んでみたくなる、そんな魅力的な本です。

「かわいくて、わがななま弟」(講談社) 金澤絵里子

生後六か月で、筋ジストロフィーと診断された正和くん。「わたしを正和の姉に生んでくれた母に感謝します」という姉と弟のふれあいのドキュメンタリーです。ところどころに正和くんの日記が引用されていますが、彼らしいユーモアのある視点が新鮮です。お母さんの介護は、120パーセント。姉弟愛も素晴らしいです。

「がんばれ!駐在っ子」(新風社) よしいたかこ

お父さんが、村の駐在所に転勤になった。三年間だれもいなかった駐在所はおばけやしきのようだった。へびは出るし、事件は起こるし、みんなおせっかいだし。でも……。都会っ子だったあきらが、村の良さがわかり、とけこんでいくまでの物語。駐在所って、昔はどこにでもあったのになあ。

「名まえなんて、きらい!」四年一組ミラクル教室
      (青い鳥文庫) 服部千春


くしゃみシリーズ3です。シリーズ化されるのは人気があるからです。すごいっ! 今回のお話しは、

 @せいらとミカちゃん人形
 Aとみぞーと夢の中のトミー
 Bたもつよよしきがくれたキーホルダー
 Cえみと二人分?

の四つです。どれもくしゃみではじまる不思議な物語です。

「レクターのいた日」 (小学館) 藤代ありす

盲導犬の感動コミック集です。この中に収められている「ペリネと歩く道」は、わたしの盲導犬不合格物語」が原作です。ちゃおに掲載されたものが、コミックスになりました。

「ディロン」〜運命の犬(幻冬舎) 井上こみち

単行本が文庫本になる。それだけでも素晴らしいのに、「ディロン」は、さらにテレビドラマにもなりました。虐待されたあげく、この犬はだめ犬だといわれていたディロン。運命の人と出会ったおかげで、セラピー犬として成長していく感動の物語です。運命の人、太田絵里の活動もよくわかります。


「びっくりスクール」(フォア文庫) たからしげる

たからさんのふかしぎなお話の入り口は、日常のなんでもないところにあります。この本には六つの短編が収められていますが、いずれも、日暮坂小学校で起こったふかしぎなできごとです。ごく自然に書かれているので、(もしかしたら、あるうるかも……)と思ってしまいます。でも、思いつくことはできません。日常とふかしぎとの結びつきは、「たからワールド」です。『落ちてきた時間』(パルロ舎)もおすすめです。

「クロコのおいしいともだち(フローベル館) 
         あわたのぶこ作 ただはるよし絵

粟田伸子さんは画家さんです。その粟田さんが文を、ご主人の多田治良さんが絵を描いていらっしゃいます。危険な友だちとおもわれてしまったクロコは、またみんなとお友だちになれるでしょうか。

2歳5か月の孫娘は、教えたわけでもないのに、ワニの写真をみると、「こわいっ」と身をすくめます。そんな孫も、やさしいワニのクロコお話しを気に入ってくれることでしょう。

「まほうのケーキをつくりましょ」(岩崎書店) 北川チハル

ポポちゃんシリーズ第2弾。まほうのケーキの材料は、「りゅうのねぐらのきのたまご」「わたあめみたいなくものさとう」「きらきらひかるほしのこな」。どれもめったに手にはいりません。「わたしがあつめてきてあげる」。ポポちゃんは、ほうきにのってとびたちます。さあて、どうなるのでしょう。ひだきょうこさんの絵が、楽しいお話にぴったりな、とっても素敵な絵本です。
(実物はもっとすてきな色彩です。手にとってぜひご覧ください)

「妖怪サーカス団がやってくる」(学研) 藤野恵美

鬼の子まめ太は、「鬼の里」を守るために、おとうの身代わりにとして、すすんで「ぶんぶくサーカス団」に売られていった。サーカス団の団員は、みんな妖怪。それぞれの特性を生かして、子どもたちを楽しませている。何の芸のないまめ太にも、厳しい修行が始まる……。何かにつけて、まめ太を助けてくれる妖怪たち。その妖怪たちがサーカスをやっているほんとうの意味は? 

「菜緒のふしぎ物語」(アリス館) 竹内もと代

菜緒と、いなかのひいばあちゃんはよく似ている。あくびもいっしょにでるし、他の人は聞き逃してしまうかすかな音や気配や匂いにも、ふたりは気がつくことができる。菜緒がいなかに遊びに行ったとき、さよばあちゃんといっしょに体験した不思議なお話しが五つ収められている。どれも、やさしく、ふしぎで、いつまでも心に残るお話しばかりだ。ふしぎが息づいているいなか(とは限らないかもしれないが)で育つ子どもは幸せだなあとつくづく思う。そんな体験をしたことがない子どもたちに、ぜひ読ませてやりたい季節感あふれる一冊だ。

「学園を守れ!」(岩崎書店フォア文庫) 光丘真理

光島家には100年に1回三つ子が生まれる。サヤ、スズ、テッペイの元気な三つ子が背負っている宿命は、闇山一族から子どもたちを守るために戦うことだった。闇のカイザーがどんな手口で子どもを襲うか、それはわからない。光島家に伝わる「ことだま」が三人を助けてくれると、きぬバアはいうのだが……。転校してきたアイドルのつなぐは、なぜかさみしそうだ。トリオでテレパシーの書き下ろしシリーズの第一弾!

「木の根橋」(アスク) 藤田富美恵

これは点字絵本です。片方のページはカラーの絵と文章。片方のページが点字のページになっています。

物語は兵庫県の丹波にある、木の根がのび端のようになった大きなケヤキの実話です。なぜ木の根が橋のようになったのか、木が病気をしたときには、どのよにうして治したのかなども、知ることができます。


「平和への夢」(PHP) 今関信子 監修訳

副題に、「自爆攻撃に巻き込まれた少女の日記」とあります。少女は十五歳の誕生日に、友だちと遊びに出かけた町で、ガザからやってきたパレスチナの青年の自爆の巻き添えになりました。心打つ平和への思いを綴った詩が遺されていたのは、彼女が、イスラエルの少女だったからだと書かれています。幼い頃から平和を強く意識して育たなければならない環境にいたからです。平和の大切さが伝わってくる本です。

絶品 らーめん魔人亭」森のおくでこっそり営業中
                   (ポプラ社) たからしげる

アラジンの魔法のランプにそっくりなランプを拾ったのは、転校してきたばかりの奈緒。ランプをこすって呼んでみたけれど、大魔神は現れません。(なあんだニセモノなんだわ)と、奈緒はがっかりしていますが、実は、このランプにも魔神は住んでいたのです。呼ばれても出て行けないわけ、それはかりそめにもご主人さまと呼ぶ人がいたからです。奈緒は偶然、この魔神と、森のおくで出会います。心やさしい魔神は、ラーメン屋を開いていました。なぜ、ラーメン屋を?思いがけない出来事が次々起こり、そのたびに、奈緒と魔神は心が通じていきます。 魔神がご主人さまに選ぶのはだれ? それとも……。どきどきわくわくしてくる楽しい物語です。

「光の街」出逢い劇団の人びと(岩崎書店) 浅田宗一郎

光のクラスに転校してきた女の子、よし美は、大衆演劇出逢い劇団のちびっこリーダーたっだのです。(大衆演劇なんか)とばかにしていた光。新世界なんかと軽蔑していたよし美。そんなふたりの間に友情が生まれるにはそう時間はかかりませんでした。光とお母ちゃんは、舞台を観たその日から大衆演劇にはまってしまい、楽屋に入りびたりの毎日。簡易宿泊所を女手一つで切り盛りしていた光のお母ちゃんが末期ガンで倒れたのは、それから間もなくのことでした。母ひとり子ひとりの光の運命はどうなるのか……。出逢い劇団を構成している人びとの背負っている人間ドラマに、生きる勇気が湧いてきます。

「ゲームの魔法」(アリス館) 藤野恵美

きなこは、アトピーの原因検査のために入院をしました。そこで知り合った紗雪ちゃんは、小さいときからずっと入院生活を送っていて、面会謝絶のカーテンの中にいます。お兄ちゃんが持ってきてくれたパソコンでメールを送ると、「ゲームの世界で会いましょう」といわれました。お兄ちゃんに聞きつつ、はじめてゲームの世界に入っていったきなこは、レベル99だという紗雪に守られながら、初めてゲームを楽しみます。病気のことを聞くこと心をを閉ざしてしまう紗雪。ふたりが体験した不思議な世界……。作者の体験が元になった物語です。横書きというのもぴったりです。


『いるるは走る』(小峰書店) 大塚篤子

今から160年も前に書かれた「桑名日記」と「柏崎日記」が、この物語のもとになっています。桑名のお城づとめから、越後の柏崎にお役がえになった両親からくる書簡。祖父は便りが届くたびに親しい人たちを招いてもてなして、読み聞かせます。祖父母の元に残ったいるるの思いや暮らしぶりが描かれた歴史時代物語です。当時の子どもの遊びや流行病、食文化、神隠しなどなど市井のようすが、子どもにもわかりやすい言葉で、興味深く書かれています。とてもおもしろいです。『夏電車が行く』(おすすめ)、『ヌンのるすばん30日』などの著書があります。

『ぼくのプリンときみのチョコ』
   (講談社YA!ENTERTAINMENT) 後藤みわこ


「好き」。お互いにその一言がなかなか言い出せない志麻子と晴彦。それだけにふたりの思いは、熱く募っていきます。中学生の異性への好奇心。せつなくて熱い思いと友情。いえいえそれだけではないのです。「ドリームカプセル」の魔力も加わって、物語は、意外な方向にはじけていきます。プリンにも深刻な意味があり、チョコにもどきどきするような意味があるのです。来年、「プリン」と「チョコ」は中学生の間で流行り、もしかしたら流行語大賞に輝くかもしれません。

『アクエルタルハ』第1巻〜3巻(ジャイブ) 風野潮

父の敵の近衛連隊長カクルハーのお供に選ばれたのは、精霊使いの少年キチェー。そして男の子のように育てられた少女グラナ。都への旅は、行く先々で、大地・森・風・水・炎の精霊たちの怒りを沈める旅でもあった……。
謎とされている古代文明の点と点を、作者の想像力でつなぎ合わせ、描き出した壮大なファンタジーです。未知の世界への誘いは、とても魅力的です。第1巻の「森の少年」、第2巻の「風の都」、第3巻の「砂漠を飛ぶ船」で第一部は完結なのですが、まだ海の底に沈んでしまったという『アクエルタルハ』の解明にに物語がたどり着くまで、目が放せません。続編が待たれます。          

「鬼の助」(てらいんく) 畑中弘子・作 辻惠子・絵

助は山から下りてきた。「村人をだまくらかして食ってやるぞ。そうすりゃ、大いばりで山に帰れる。人間なんかちょろいもんよ」。そう思った助でしたが……。
鬼よりひどい人間の多い昨今、助のやさしさとせつない思いが、いつまでも心に残ります。

「しんちゃん」― 筋ジストロフィーのしんちゃんの日々 
            (草土文化)  写真・菊池和子



慎太郎くんは、筋力が衰えていく病気にかかっています。笑顔の素敵な12歳のしんちゃんの日々を写したのは、しんちゃんが通う学校の先生だった菊池和子さんです。人間が成長するということはどういうことなのか、しんちゃんから教わることが多いというご両親。そんなお母さんの明るさと、お父さんのやさしさもいっしょに伝わってきます。

「四年一組 ミラクル教室」
        講談社青い鳥文庫   服部千春


前作好評につき、シリーズとして二作目が発刊されました。今回のくしゃみで始まるお話しは、

・たかしと心霊写真のおじいちゃん
・ごうとネズじいのお料理修行
・みどりとレイのオーデション
・さやと鈴木くんのバトンリレー

の四つです。不思議で楽しいお話ばかりです。

「走れ、セナ!」(講談社)  香坂 直

第45回講談社児童文学新人賞佳作受賞作

県の陸上会を目指して練習を重ねるセナは、五年生。二学期の席換えで決まった班は、よりによって最悪な三人といっしょ。学校でも家でも、ふつうじゃない毎日にいらいらするセナ。「人の心の中がどうなのか、外から見ただけではわからないぞ」と、お母さんの弟のサトルくんにいわれた言葉を、セナはどのように受け止めるのでしょう。登場人物が生き生きと、小気味にテンポ良く描かれています。

「アタイ探偵局「四文字のひみつ」(岩崎書店) 光丘真理

四か所の犯行現場に残された「ひ」「ら」「へ」「ん」の四文字。これはいった何のメッセージなんでしょう? お江戸小学校の五年生のアタイは、探偵局をしているおばあちゃんの謎解きを手伝うことになったのですが、おばあちゃんが何かにつけて一目置いているケンタといっしょというのが、なんだかしゃくです。江戸とよばれていた時代の文化が、この謎を解くカギだったのですが……。少しずつわかってくる謎。アタイはケンタを抜けがけようとして、危険な目にあってしまいます。さて、犯人はいったい、だれなのでしょう?

「千人針は語る」(海竜社) 森南海子

リフォームで名高い服飾家の森南海子さんが二十年来追ってこられた千人針については、すでに十年前に、「千人針」(情報センター出版局)として出版されています。その中のエピソードを選んでより深く書き直された感動のドキュメンタリー。写真は野寺夕子さん。千人針の糸目が語る物語にぜひ耳を傾けてみませんか。わたしたちの知らなかった時代をひしと感じ取るっことが出来ます。

「ぼくのペットはドラゴン」(岩崎書店) 中村景児

もしドラゴンがペットだったら……。それはどんなにすてきでしょう。しかも、そのドラゴンには、ほかに飼い主がいて、その人が、ふしぎ王国のおひめさまだったとしたら……。精密に描かれた絵が、絵本の世界にいざなってくれます。本の中に出てくるキャラクターの表情が、なんともいいのです。各ページの絵を見ていると、いろんな発見が! 

「なまくら」(講談社)  吉橋通夫

書下ろしを含む七つの物語は、感動を呼ぶものばかりです。帯に書かれている言葉に勝る紹介はないと思いましたので引用させていただきます。「江戸から明治にかけて代わり行く時代の節目、華やかな京の路地裏にたたずむ七人の少年たち。明日への迷いを抱えつつも、『生きる』ために必死でもがく、彼らの熱い青春を描いた珠玉の短編集」とありました。まさに……。吉橋文学は、読んでいるうちに姿勢を正さずにはいられない崇高さがあります。言葉が光っています。佐藤真紀子さんの挿絵も、物語にぴったりです。

「忍剣花百姫伝(にんぽうかおひめでん)」(ポプラ社)
  @めざめよ鬼神の剣      越水利江子 


不思議な世界に引き込まれ、夢中になり、気がつくと、今、自分がどこにいるのか、ふと、忘れていました。作者が子どもの頃から夢見ていたという世界は、奥が深く、不思議の尽きる暇がありません。次から次に繰り広げられる呪術や忍術、超能力や神宝がらみの物語の展開に、謎が解け、新しい謎が生まれ、もっと知りたい、もっと読みたい、と越水ファンタジーのとりこになってしまいました。勢いのある物語です。シリーズで、まだまだ続くようです。乞うご期待!

「HOLA! GORO」(オラ! ゴロ)  ぼちぼち行こか
                  三五館 松村六娘(むむ)


ゴロ・ホセ・モンセラートという立派な名まえをもつブルドッグが、わが町スペインを紹介しつつ、人生観を述べています。そのひと言が、くっ、いいのよねえ。スペインの町角、スペインの家。ゴロの案内で観ているうちに、スペインで住んでみたくなるような、そんな本です。

「空の天使」(三五館)  松村六娘(むむ)

赤ちゃんの足が天使の翼だなんて、なんて素敵な発想でしょう。でも、ほんとうに翼にしか見えない写真もあって、赤ちゃんの足の表情の豊かさに驚かされます。生まれてきたときは、みんな羽を持っていたという六娘さんの思い、小さな孫がいるわたしには、とてもよくわかります。赤ちゃんは、生まれてくるだけで価値があるのですね。


「お世話になったような、ならないような」 三五館
                           森南海子

このタイトルは、96歳までかくしゃくと生きてこられた森南海子さんのお母さまが、亡くなられる寸前に残されたメモに書かれていた言葉だそうです。生涯女王さまのように君臨されていたお母さまのことや愛猫のこと、日常のくらし、家政婦さんのこと、価値観……。どれもこれも森さんならではの魅力的なお話ばかりです。


「怪盗ファントム & ダークネス EX‐GP2」 (JIVE) 
                      藤野恵美


シリーズ2巻目。「ハリウッド・スクラップ」「狼の首飾り」「盗天竜宝」「賢者の石」の四話から成り立っています。怪盗として与えられた課題をクリアーしていくおもしろさに加えて、四つの物語に流れるテーマ(ひとことで愛というには軽すぎて、なんと書けばいいのでしょうか)に、ほろりと心が揺れます。子どもにもわかるように書いてあるのがすばらしいです。

創作童話同人誌 『こぶし』10号   「こぶしの会」 

1993年4月から1年間、東京で、岡信子先生の童話講座が開催されました。翌年講座が終わったあと、同人「こぶしの会」が誕生しました。その後、転勤などで全国に散らばっても、研究会には、作品が寄せられるそうです。単行本形式の立派な本には、12名のメンバーの創作童話が掲載されています。「時間の砂」の国元まゆみさん(奈良県在住)、「走るおじいちゃん」の赤木きよみさん(大阪府在住)もそのメンバーです。

百怪寺・夜店シリーズB
『奇怪変身おめん屋』(あかね書房)
 越水利江子

満月の夜のだけ、百怪寺の参道に現われる夜店があります。今回は、その中の変身おめん屋のお話です。奇妙な変身おめんは、おめんの方で客を選ぶというのです。お金を筒に入れたとたん、乙姫さまのおめんがたっぺいの顔に、のっぺらぼうが風太の顔にはりついてしまいました。はずそうとしてもとれません。とるにはシオダマシを見つけなければならないというのです。さて……。
百怪寺夜店シリーズは、すでに@『妖怪ラムネ屋』A『魔怪さかさま屋』が刊行されています。まだまだ続刊されるようです。乞うご期待。

『パーティがはじまるよ』(岩崎書店) 北川チハル

「ぽっかり沼のパーティには、なにを着ていけばいいの?」
魔女の子ポポは悩んだあげく、動物たちのおしゃれをまねすることにしました。ところが、なんて、へんちくりん。「あやしい、おかしい、おばけだあ」と、みんな逃げていきました。
だいじょうぶ。ぽっかり沼のパーティは、おしゃれなんかいらないのです。だって、ほら……ね。
楽しいおはなしに、ひだきょうこさんの絵がぴったり!

『七時間目の怪談授業』(講談社青い鳥文庫) 藤野恵美

はるかの携帯に不幸のメールが届いた。9日以内に3通のメールを送らなければならないのに、古田先生ったら、携帯を没収してしまった。返してもらうには、先生が「怖い」というまで、怪談話をしなければならない。親友の真紀や、怪談話のうまい健吾、霊感があるという静香……。知恵をしぼってするどんな怪談話にも怖いといわない先生。日にちだけがどんどん過ぎていく。今日も下校の放送が流れた。どうして先生は「怖い」といわないのだろう。作者のメッセージが伝わってきます。

『ほんとうに心があたたかくなる話』1年生(ポプラ社)

12のお話はどれも、ほのぼのとしていて、子どもに読んできかせたいお話ばかりです。中でも、中谷詩子さんの「おまもり」は、ユウタの子どもらしい気持ちに、心洗われる思いがします。ユウタがおばあちゃんのおまもりの中に入れたてがみ……、それは、おばあちゃんとユウタだけの秘密ですが、この本を読んだ人には、こっそり教えてもらえます。

『四年一組 ミラクル教室』
          (講談社・青い鳥文庫) 服部千春

「はっ、は〜っくしゅん!」
くしゃみをしたら、あらまあ、なんと! 
四年一組の四人の仲間に起こった四つの不思議なお話。

@ゆうきと消しカス人形のトム
Aとしきと秘密のバット
Bみなこと正直な鏡
Cあきらとお守り自転車

四つのお話はどれも楽しくって、しかも悩んでいる子どもの背中をぽんとおしてくれるにちがいありません。


『白い花火』(銀の鈴社・ジュニアポエム) 鶴岡千代子

しまうましましま しましまめいろ
どこからいっても ぐるぐるめいろ
  アブが まぎれこんで
  ためいき ついた
  いったいでぐちは どこなんだろう (つづく   しまうま)

収められている詩のうち32編に曲がついているそうだ。どんな歌になったのだろうかと、聴きたくなる。タイトルの「白い花火」とは、「はまゆう」のこと。「白い虹」という詩集も、同じシリーズから出ている。


少年・少女詩集『月のかおり』(らくだ出版)  童みどり


空に ひばりの声がする
どこ?
目をこらし みあげていても
やわらかい うすびの雲に
ただ 声の花びら   
         (ひばり  行間がとれなくて、ごめんなさい)

写真家でもある作者の目は鋭く、やさしい。選ばれた簡潔なことばでつづられた作品が、たくさん収められている。

『さるすべりランナーズ』(岩崎書店)
                     浅田宗一郎作


速人は、クラスメイトから「のろと」とからかわれている。走ればいつもびりっけつ。おちゃらけもんの速人は、全く気にしていない。が、そうはいかなくなった。速人とぶつかったせいで、エースの強士が骨折してしまったからだ。責任を感じている速人に、コーチを名乗り出てくれたのは、あこがれの潤子さんだ。お寺の境内で特訓が始まった。そのうち強士も加わって……。しだいに芽生えてくる三人の友情。本当に大切なものは何かを教えてくれる。
日本児童文芸家協会創作コンクール受賞作品。

『こぎだせ! ぼくらのカワセミ号』(国土社)
                         横山充男作


勇一と誠は、店の倉庫で古いカヤックを見つけた。ずいぶんおんぼろだ。お父さんに聞くと思い出のカヤックだという。二人は自分たちで修理をして、乗ってみたいと思う。お父さんは条件付で許してくれた。それにしても、転校生みくは、なぜカヤックに乗るのがうまいのだろう……。それには、二人のお父さんたちにも関係のある思わぬ秘密がかくされていた。決してうまいとはいえない勇一たちのカヤックバドリングをみていると、四万十川の水しぶきがかかってくるようだ。読後、爽快な気分に。

『黒まるパンはだれのもの?』 (あかね書房)
                        後藤みわこ作


お母さんの作る栄養満点の歯ごたえのある黒まるパンは、雄介自慢の、雄介だけの最高のパン! とろこが、ある日、あやしいおばあさんがあらわれて……。それ以来、お母さんまでようすがおかしい。雄介が学校から帰ると、必ずいたお母さんがいない。パンもお母さんも、だんだん雄介だけのものではなくなっていく。そんなのいやだ! 十歳の少年の心の成長を描いた感動の物語。それにしても、黒まるパンのおいしそうなこと。体によさそうなこと。

第21回福島正実SF童話賞大賞作品
   「ゆうれいレンタル株式会社」(岩崎書房) 
                       山田陽美作

弟が病気がちのために、優真のことはいつもあとまわしにされてしまう。あとまわしどころか、忘れられていることもある。ふてくされて部屋にかけこんだ優真の前に現れたのは、なんと、ゆうれいのジュン。お父さんやお母さんを探しているらしい。いっしょに探してあげることを条件にジュンを説得した優真は、ゆうれいレンタル株式会社を始めるが……。楽しくて、せつない命の物語。  


「怪盗ファントム & ダークネス EX‐GPI」 (JIVE) 
              藤野恵美


五年生の七海とクラス担任でもある垣内先生の実態は、なんと怪盗なのです。しかも叔父と甥の間柄でもあり、世界を股にかけた怪盗コンビというのですから、おもしろいです。二人は、選ばれた怪盗たちのグランプリでもあるEX‐GP(エクスプローラー・グランプリ)にチャレンジするため、教室を抜け出し世界に飛びます。クリアーするべき課題は四つあって、その一つ一つが物語りになっています。どれも工夫されていて魅力的なのですが、特に「シャトーシュバリエ1943」の物語の背景が感動的で、その発想力にうなってしまいます。


『元気よすぎる息子へのラブレター』
          大船渡まちづくり塾企画
          秋山ちえ子・漆原智良・千葉剛/編
          KTC中央出版

親から子に贈る愛のメッセージという副題がついています。漆原智良先生の講演がきっかけになって、「あなたが生まれた日全国手紙コンクール」が企画されました。親と子の強い絆を書いた50数編の入賞作が光っています。「元気よすぎる息子へのラブレター」は最優秀賞のタイトルです。子どもとその親を称える町づくりをしている岩手県大船渡をふるさとに持っているみなさんは、幸せです。

『水の精霊』第W部 ふた咲きの花(ポプラ社)
                        横山充男


読み終わって、しばらくは感動に浸っていました。
「かごめ かごめ 籠の中のとりは……」
このわらべ歌には、ある予言が隠されていたという展開は、まるで謎解きのようで驚かされました。綿密な取材の上になりたつ物語は、壮大で奥深く神秘的で、すべてのできごと、すべての人物に魅せられてしまいます。
また第T部から読み返したくなりました。

『空のくにのおまじない』(文研出版) 北川チハル作

泣き虫のあすかちゃんは、隣の席のユウくんにいつも元気をもらっています。ある日、ゆうくんが『空のくにのしょうたいじょう』だといって、こけのついた石ころをくれました。「りゅうの赤ん坊が住んでいる池の石なんだ。そこに行けば、空飛ぶりゅうが見られるんだよ」。あすかちゃんはなんだかこわくなって、「石ころなんて、いらない!」といってしまいました。が……。
やさしくて力強いお話は、子どもの味方です。作者は『チコのまあにいちゃん』(岩崎書店)で第32回日本児童文芸家協会新人賞を受賞。ホームページもご覧ください。

『ねこまた妖怪伝』(岩崎書房)  藤野恵美作

第二回ジュニア冒険小説大賞受賞作品。
ミイは、二股しっぽのやさしい子猫です。自分が猫又と呼ばれる妖怪であることすら知りません。大切に育ててくれたおばあさんが死んでしまってから、人間たちに追われて、妖怪の世界に引きずりこまれていきます。一方、頭の中で想像したことが現実になってしまうという自分の力におびえている少女「まなか」がいます。まなかとミイが出会うことで、妖界が大きく動き出し、二人はその渦の中に巻き込まれていきます……。ゆだんしていると、あなたも妖界に引きずり込まれるかも。暖かさも伝わってきます。
作者のホームページは、おいしいもの満載です。

『まんねん ほーい』  いってきまあす 春風ふいての巻
           (毎日新聞社)  文 吉橋通夫 

毎日新聞に連載されていた吉橋通夫先生の『まんねんホーイ』が二冊の単行本になりました。動物と話のできる男の子まんねんの不思議で楽しい旅のお話がいくつも詰まっています。「どきどきすること」「くらくらすること」「びしょぬれになること」などなど、どれもこれも興味津々。リズミカルな、なんとも味のある文体は、読み聞かせにも最適です。「春風ふいて」の巻きに出てくる生き物は、シイの木・クモ・カモシカ・カメ・カニ・ツキノワグマ・ヤマネ・フクロウ・アマガエル・ホタル・カマキリ・カッパ・イノシシ・モグラ・タコたち。
佐藤真紀子さんの挿絵が、また素敵なのです。

『まんねん ホーイ 』  ただいまあ 秋風ふいての巻
           (毎日新聞社)  文 吉橋通夫 

まんねんが旅の帰り道、またいろんなことにであいます。「ねむくなること」「目がまるくなること」「とびあがること」などなど。赤トンボ・タヌキ・カラス・クジラ・アメンボ・ステゴサウルス・ミミズ・エンマコオロギ・ツル・サル・イヌワシ・キツネ・ウサギ・シイの木たちが出てきます。楽しい話の展開に、思わず「ホーイ ホーイ とんでこい〜」と、いっしょに叫んでみたくなります。


「青い珊瑚の伝説」(鳥影社)  石神誠 作

この本には、SFに興味を持ち始めた少年少女が喜びそうなお話が四つ収録されています。「ユウナの海」「ブルーコーラル」「不思議な転校生」「プログレス」。ばらばらにみえる四つの物語には共通点があるそうなのですが……。それは読んでのお楽しみ。
「世界で一番美しいもの」に続いて2冊めの出版です。

「あした地球が終わる」(汐文社) 
              後藤みわこ作・せきねゆき絵

月が欠けてしまったために地球に起こる恐ろしく、ミステリアスな出来事。生き残った四人の子どもたちは、どうやって切り抜けていくのでしょう。SFならではの飛躍した発想の素晴らしさもさることながら、四人の織り成す人間模様が とても魅力的に、かつ深く描かれていました。もし、自分の身にそういうことが起こったら……。読みながらどんどん引き込まれていく作品です。

後藤みわこさんのホームページも合わせてごらんください。

「日本語の使い方」(創元社) 西田直敏・西田良子
表紙には、「話し方と書き方の常識」と、帯には「国語の知識と情報を満載」と書かれている。今、アナウンサーでさえ、正しい日本語が使えない人もいるときく。ましてや、若者たちの言葉の乱れは甚だしい。せめて、文章を書くことににたずさわっている者だけでも、正しく、美しい日本語を使いたいものだ。
「日本語の常識」から「文章構成の基本」「ジャンル別文章の書き方」などについて詳しく書かれたこの本は、まさにお手本である。

「うたってよ子守唄」(アートヴィレッジ)
                西舘好子 協力松永伍一


次々に起こる親による子どもの虐待事件に胸を痛めた演劇プロデュ―サーでもある著者が、「日本人の心に子守唄を取りもどせば……」と、日本子守唄協会を設立。この本は「子守唄ってなあに」に始まって「子守唄の背景」「思い出」など、心温まるエピソードといっしょに、歌い継がれてきた日本各地のおもしろい子守唄が紹介されています。
「すべてのいのちは讃えられるために、この世に生まれてくるものです」という松永氏の言葉に感銘。 日本子守唄協会HP

「歩いていこうよ」(学習研究社)北ふうこ作 岡本美子絵

(ぜんそくの妹ばっかり大事にされて)と、つい腹立たしく思ってしまう兄たけし。妹のためにいなかに引っ越てきたのも、おもしろくない。自転車がこわれたことをきっかけに、幼稚園まで歩いていく妹に、しぶしぶつきあって歩いてみると、今まで気がつかなかったいろいろなことにであうことができた。妹が、お兄ちゃんに悪いなあと気を使っていたこともわかって……。兄妹を見守っているおじいちゃんの大きな懐があたたかい。

鳥越信 
 はじめて学ぶ「日本の絵本史」TUV
(ミネルヴァ書房)

T 明治から大正期にかけてのに品の絵本の歴史
U 戦時下絵本のダイナリズム
V 戦後絵本のさらなる広がり

・日本で最初の絵本は何だと思いますか? 
・私が幼児期に出会った「もじゃもじゃペーター」はUにのっていました。あなたの思い出の本は、どの巻に? 
・貴重な写真もたくさん掲載されています。

「プリンプリン物語」(汐文社) 文 大塚菜生

王冠とともに、海から、アル国アルトコ市に流れついた女の子プリンセスプリンプリン。「祖国はどこなの?」 仲間といっしょの、愛と勇気と冒険に満ちた祖国探しの旅物語。

NHKテレビでおなじみの、懐かしの「プリンプリン物語」がシリーズ本になりました。1巻から5巻まで出るそうです。大人は思い出といっしょに、子どもはわくわくする心といっしょに、さあ、アドベンチャーの旅に出発しましょう!

                     ホームページ童人の杜

「風の森のユイ」  吉橋通夫作 ・ 佐藤真紀子絵

「少年少女新聞」に
2002年4月から2003年3月まで一年間連載されたものに加筆・改稿、単行本として新日本出版社から発刊された。不思議な力を持つ青き玉をめぐる冒険物語は、子どもたちにとって、心はずむ内容であることはもちろん、書き手にとっても、ぜひ読んでおきたい一冊だ。あちこちで文章教室をされている師の文章には無駄がなく、美しい。子どもにわかりやすい言葉を使いつつも、遠い時代からのメッセージが、りんと伝わってくる。こういう場合は、こういう風に書けばいいのか、とても参考になる。佐藤真紀子さんのイラストも素敵だ。


できるとこんなにおもしろい!!
「デジカメ写真
パソコン」新星出版社
          高作義明・貝原典子・青木蘭子著


デジカメユーザーのためのパソコン超入門書。年賀状やカレンダー、Tシャツなどオリジナル作品を作るための手引きもふくめて、わかりやすく解説。パソコンで広げようデジカメライフ。


横山充男作 「夏のてっぺん」(佼成出版社)

「塾に行かなくてもいいから」。調子のいいママの言葉にのせられて、ゆうすけは、夏の間、おじいちゃんの山小屋に、あずけられることになった。
にこりともしないおじいちゃんに、こきつかわれるばっかりの毎日。(逃げ出してやる!)。そう決心したゆうすけだったが……。山じいさんの懐は山のようにでっかく、その生き様に、ゆうすけは、だんだんひかれていく。
この夏、日本中の子どもたちにも体験させてやりたい山のてっぺん。叶わないなら、せめて本の中で疑似体験を。

西田良子編 
    宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を読む(創元社)


専門分野の本とはいえ、全体に、非常に興味深く書かれている。特に、第二部の、八人の研究者によって書かれている「銀河鉄道の夜」の研究作品は、賢治フアンにとって、見のがせない賢治の世界が繰り広げられている、また、本のあちこちに散りばめられた40数編のコラムも、まるで銀河星のごとく、きらめいている。
興味深い写真や資料が多いのも、視覚的にとても楽しい本になっている。手にとれば、手元に置いておきたくなる一冊だ。
賢治を読む」(この欄で紹介済み)もあわせてご覧下さい。

越水利江子作 
      「ごっとんクリスマス」(新日本出版社)


クリスマスの「ごっとん」なできごとは、小さな読者を不思議な世界にいざなってくれます。『よみせぶとん』や『かいぞくぶろ』を読んでもわかるように、「どこでもあそべる、いつでもたのしい」という作者のメッセージが、お話の中でおどっています。渡辺有一さんの絵もわくわく感も素敵です。

日本児童文学者協会新人賞など受賞の「風のラブソング」や「フアースト・ラブ」「フレンド」「もうすぐ飛べる!」などもおすすめ。

後藤みわこ文 
   「未来を走れ ハイブリット エコカー」学研


環境によい自動車開発のドキュメンタリーを、SF仕立てに書いた科学読み物。写真とイラストで、わかりやすく構成されている。これを読んで科学者になりたいという子も、きっといるだろう。


「いのちがぱちん」(学研)・「ママがこわれた」(岩崎書店)・「燃えてデュエット」(汐文社)も、楽しいお話だ。

横山充男作 
      「水の精霊」 第1部 幻の民(ポプラ社)

               第2部 赤光

たびたび夢にあらわれる白い花。それは14歳の真人の中に、なにかが目覚めようとしている兆しだった……。推理していく楽しさに、引きずり込まれていく。
2部は、ますますスケールが広がっていく。1部は2部の布石に過ぎなかった……のか。改めて湧き水を見直し、生き方を改めたくなる。

「少年の海」「四万十川物語 光っちょるぜよ! ぼくら」
「少年たちの夏」は、ぜひ子どもたちに読ませたい。


北ふうこ作 「大阪ずし秘密の大作戦」(汐文社)

大阪ずしってどんなすし? すし屋の息子のぼくさえ知らない大阪ずし。アメリカからやってきたマイケル先生に食べさせてあげたいなあ。よし、自分でチャレンジや。いよいよ本場だという日を前に、マイケル先生がアメリカに帰ってしまうことになった。

「おやしこおばばのてんてんパチンコ」(汐文社)も、おもしろい。

上坂和美作
  「お料理コンテスト・スパゲッティで大勝利」
(汐文社)

       
お料理コンテストに予選通過したというのに、かんじんのママは、おじいちゃんの看病のため田舎に帰っている。本番は家族で出なければならない。パパに頼んでみるけれど、知らん振り。なんとか優勝して、ママを喜ばせてあげたい。パパをその気にさせていくぼくのがんばりぶりがほほえましい。ひなた風スパゲッティっておいしそう。もちろんレシピもついている。
「コロッケいっぽーん! 少女剣士」(学研)も、元気な女の子の楽しいお話だ。新作の科学読み物「世界の食生活を変えた奇跡の麺」(学研)も力作だ。




高岸弘著
 「残像力で生き方が変わる 住まい革命」
(講談社)

図柄をじっとみつめるだけで、暮らしが変わる残像トレーニング。インテリアデザイナーでもあり、建築家でもある著者が編み出した残像による脳のトレーニング手法。
著書に「ベースボールメンタル 君の甲子園」「思いのままに脳を動かす
残像力」「ウソも芸術 イタリアン」「ここ一番に脳を集中させる残像力」(以上講談社)がある。


計良ふき子作 
  「いたずら魔女スプリのたんじょう日」 ポプラ社

魔女っ子スプリはいたずらっ子? ええ、まあ……。でも、それだけではない、スプリにはすごい力があったんだよ。がんばれ、スプリ! けなげで、思わず声をかけたくなるスプリのお話は、みんなに元気を与えてくれる。






岡信子 作
   「おおきなキャベツ」 絵 中村景児
 金の星社

キャベツ畑にキャベツがずらり
あれれ、そのうちの一つがどんどん大きくなって……

不思議なお話の展開に思わず引き込まれてしまうことうけあい。子どもたち、キャベツの中でどんな体験をしたのかな?



野村一秋 作 
    「天小森教授 初恋ひきうけます」 小峰書店

目次をみただけで、吹き出したくなる。「初恋は鉛筆の味」? レモンじゃなかったのよね。「男をみがく男石」? ふーん、そんなのがあるんだ。「あらけずりの男には、デリカシーパウダー」! うんうん、ふりかけたいやつ……、いえ、あの、その……、ふりかけたいお方が、あっちにも、こっちにも。とにかくおもしろい。南伸坊さんのイラストもいい。

「天小森教授 宿題ひきうけます」(小峰書店)



服部千春作 
        「グッバイ! グランパ」
(岩崎書店)


第18回福島正実SF童話賞大賞作品
ご先祖様は、子孫の味方。きっと君を守ってくれる。読後、がんばろうって、気持になれる。心もふんわり、いい気分。




石神誠 作
    「世界で一番美しいもの」(文芸社)


36編の短編から成り立っている童話集。十七歳から四十五歳にいたるまでに書き溜めた創作民話は、どれもウイットに富んでいて楽しい。




 大塚菜生 作 
      「うちの屋台にきてみんしゃい」(岩崎書店)


元気なきなっちゃんの生活観あふれるお話は、毎日小学生新聞に連載されたもの。

他に、「ぼくのわがまま電池」(福島正実SF童話賞大賞受賞作品・岩崎書店)、「あんことそっぷ」(汐文社)などがある。






仲間といっては失礼、師の本です。

吉橋通夫作 「竜と舞姫」(講談社)


遣唐使の従者として唐に渡った小麻呂は、喜娘と出会う。少年と少女の夢と志は海を越えて……。二人の愛と思いが叶うまでの大スペクタル。この本を読んだ子どもたちは、歴史が好きになること請け合い。
「京のかざくるま」「京のほたる火」「さんちき」など、師の歴史児童文学は臨場感にあふれている。また、選び抜かれた言葉で綴られている文章は、崇高なまでに美しい。



野寺夕子写真・文 「ころぼっくるの手」

モノクロの写真からは、作者のあふれる思いが伝わってくる。
知的障害者の通所授産施設に通ってくる障害者のひとりひとりの個性のとらえ方が、光っている。
他、写真詩集「春のふとん」は、心境をあけすけと吐露した潔さがいい。
また話題になった写真集「臨月」(準太陽賞受賞)のヌードモデルはみんな素人さん。大きなおなかの中には、小さいながらも重い命が。







西田良子編 「宮沢賢治を読む」 創元社


宮沢賢治の研究者たちがまとめた内容は、他に類をみないほど充実している。思わず見入ってしまう誌面構成で、賢治並びにその作品がわかりやすく、描かれている。興味深い写真の数々に、版を重ねていることもうなずける。


長野ヒデ子著 「ふしぎとうれしい」 石風社

絵本作家長野ヒデ子さんのエッセイ集
いろんないろいろ、楽しくまとめてある。表紙のイラストのように、いっぱい、いっぱい……。





坂本のこ詩集「ぼくの居場所」 坂本こう 絵

姉と弟の合作の詩集は、長年の夢の結晶だそうだ。昔、子どもであったことを忘れずにいることの大切さを実感できる言葉の結晶。

「テムテムと名前のないウサギ」 詩集「コバルトの空の下」などがある







橋谷桂子作 「コッコばあさんのお引越し」 
                       文化出版局


カネボウミセス童話大賞受賞作品
あれまあ、おやおや! お引越しをきめたコッコばあさんの後ろから、「連れてって」と犬や猫はもちろん、挙句の果てには家財道具一式がついてくる。
ただ愉快で楽しいだけではなく、恐竜の発掘問題という現実問題を絡ませてあるのが、お見事。
村田エミコさんの版画が、ユーモラスでいい。


中尾三十里作 「さいなら天使」(ひくまの出版)
         熊野の里指導文学大賞受賞作品


環境に左右されず、、たくましく、明るく生きていく少女のおはなし。読後、すかっとするのが、うれしい。

「かいじゅうパパ」(カネボウミセス大賞受賞作品)「しっぽにごようじん」「あいつさがし」(小川未明童話賞受賞作品)などがある。

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