★童話ミニ講座  2003・4  〜 2004・3

12年前、たった一枚の原稿用紙を埋めることさえ苦痛だった私を、童話作家に育ててくれたのはカルチャー講座の先生であり、そこに通ってくる仲間たちでした。今度はお返しする番。

2003年4月から毎月2回(第2・第4木曜日)、堺のパンジョライフカレッジで「童話講座」を開く運びになったのも、お話を創り出すことの楽しさ、出来上がった時の喜び、活字になった時の感動を体感してもらいたいのはもちろんのこと、ただのおばさんから童話作家になったとっておきのノウハウを、次の世代の人に惜しみなく伝えたいという思いもあってのことです。講座内容のダイジェストを、このページで紹介していきます。
パンジョのライフカレッジリンク(5階をクリック 8のライフカレッジをクリック……)

―3月25日― 最終回

★合評・プリント
2作品について共通していえることは、書き出しが魅力不足ということだ。それで、「魅力的な書き出しのための6つのポイント」というプリントを作成して配る。今日の2作品の書き出しについて、私ならこうするという例を、添える。

★この講座を開講して一年が経ちました。童話を書くのが全く初めてだという受講生のみなさんを対象に、原稿用紙の使い方、発想の仕方、情報ノートの作成方法、魅力的なキャラクターの設定の仕方、葛藤の作り方、物語の履歴書の書き方などなど、基礎的な指導をしてきました。その成果があってほとんどの人が、5枚から10枚の作品を自力で書けるようになりました。あとは、書いて、書いて、書いていくだけです。その先に待っているのは、公募の入選。くり返していくうちに、やがて童話作家への道が開けてくることでしょう。自分を信じて書き続けてください。わたしは、楽しく童話が書けるように、体験を元に、今後も水先案内をしていくつもりです。
パンジョの講座はまだ続きますが、HPのこのミニ講座は、今日を持って終了いたします。1年間ありがとうございました。少しでもお役に立ったでしょうか(事情があって、講座のごく一部しか公開できなかったことをお詫びいたします)。皆さまの、ますますのご健筆を祈っています。

―3月11日―

★合評
きっちりかけていた作品(11枚)で、短期間でうまくなったと驚く。それでも合評すれば、作者が自分では気がつかないほつれがどんどん見つかる。それにしても、この教室は合評がうまい。20代から70代までぞろり揃っているのも合評の巾の広さにつながっているのかな。そろそろ応募してみては?
★プリント
大人の価値観と子どもの価値観の違いをわかってもらうために、こどもの本音について考える。
久々に発想の訓練(創作のための頭の体操)をする。

―2月26日―
★合評

五枚作品は二作ともよくまとまっていた。タイトルにも期待感があったし、五枚に収まっていたことや、ラストにも工夫がみられたことは、書き始めた当初と比べてかなりの進歩だと思う。問題は、キャラクターの設定が甘いことと、葛藤が書けていないことだ。キャラクターをしっかり描けば、自ずとしぐさ、セリフが決まってきて、ストーリーが展開していくきっかけになることもある。幼い子どもにも葛藤はある。例えば、にんじんが食べられない。ピアノがうまくひけない。好きな子にきらわれてしまった。などなど。また、兄弟の存在そのものが悩みの原因になることもある。葛藤をうまく引き出して、子どもの目線で深く書けば、お話がふくらんでいく。二作品について、どこをどうすれば子どもにとって魅力的なストーリーになるか、具体的に指導。
★プリント
自分で推敲するポイントを9つ箇条書きにして渡す。書いているうちに、自分でもわけがわからなくなってしまった作品でも、ポイントごとにクリアーしていけば、無駄な個所が落ちて、作品そのものが見えてくる。
短編と長編
もともと10枚だった「灰色バス」という作品を、「灰色バス変身大作戦」という単行本に書き直したことを例に、短編の素材を長編(中編)に書き直すコツというか、話の膨らませ方について、具体的に説明する。
★映画「みすヾ」の紹介。


―2月12日(木)―

★合評
二作品について。一作は書き直し作品。なんといってもタイトルがいい。動きがあって、楽しくて、期待感のあって、子どもらしくって。今ここで紹介できないのが残念なぐらいだ。作品自体も、子どもの視点に立っているのでわかりやすく、脇役のガキ大将(上級生が)光っていた。
もう一作は、新作。この作品の合評に入る前に、「魅力的な主人公書くには」というプリントを配る(昨夜、合評作品も基づきひねり出したもの)。主人公はもちろん、登場人物のキャラをしっかり設定しておくと、セリフに個性が出るし、物語に深みが出てくることを具体的話す。素材が面白いので、ぜひ書き直してほしい。
★プリント
上記の通り「魅力的な主人公を書くには」。
★1月29日に体験した「ネタ探しツアー」(1月29日に日記参照)は楽しかったらしく、物語の背景の大切さも徐々に理解してもらえたようだ。
★新しい作品が二作出た。

― 番外 ―

「創作って難しいですね」と、小さな壁にぶち当たった受講生からメールが来ました。返信メールを送ったところ、「壁に貼ってはげみにしています」ということでしたので、もしかして、創作に行き詰まっている人のお役に立つかも知れないと、大体の内容をコピーしておきます。

いくら才能がある人でも、最初から納得できる作品が書けることは、まずありません。どうすればいいか、それは、どんどん書いて、みんなに読んでもらうことです。幸い、教室のみんなは、ちゃんとした合評の目を持っていると思います。 いわれた本人にとっては、きびしいこともありますが、ずしりときたことほど心に残り、いずれ飛躍につながります。素直に耳を傾けるといいと思います。めげないことも才能の一つです。そして、何より、楽しんで書くこと、これが大切です。
趣味で童話を書く。それだけなら、「おじょうずです」ですませばいいので私も楽なのですが、なんとか公募に入選して、次の段階に進んでほしいので、つい厳しくなります。常に山を頂上をめざしてください。まだ、登山シューズをはいて歩き始めたばかりです。歩き続けているうちに、必ず、目指している山の頂上にたどり着くと信じることが大切です。
いつもいうように、童話は「創作」であって「日記」ではありません。日常生活の中で見つけたヒントを種に、創作しなければなりません。創作のコツは……、自分を振付師だと思ってください。ちまちまとした踊りは、舞台栄えしません。大胆にといえばいいのでしょうか、個性的で切れのある、意表をついた踊りを、主人公にさせてください。そのうち、主人公が勝手に踊り出すようになってきます。お楽しみに。


 1月23日(木)

合評
4回目の書き直し作品をみんなで合評したあと、「書き直す」ということについて話す。たとえば公募に落選したとする。それをそのまま他の公募にだしても、よほどの秀作でないかぎり入選は望めない。そこで「書き直す」ことになるが、ちまちまと部分的に手を加えても、書き直したことにはならない。葛藤を深め、読者の共感を呼び、余韻のある作品にするためには、主人公または脇役の性格を鮮明にし、テーマを確認した上で、ばっさり書き直さなくてはならない。書き手は自分の作品に愛着があるので、いったん書いたものをなかなか「ばっさり」できない。「ちまちま組」か「ばっさり組」か、どちらが大きなステップを登ることになるのだろう、ね。
ただし、みんなの意見に耳を傾け、自問自答しつつ4回書き直した努力は、力となって、今後の創作活動につながっていくことは確かだ。
★プリント
文章チェックのポイント・作品評価のチェックポイントについて
ネタ探しツアー
大阪を満喫するおとくな一日観光ということで、「大阪周遊パス」なるものが発売されている。電車・バスが乗り放題。しかも、24の施設の無料入場券がついている。机の上での発想の練習を重ねてきたので、課外レッスンとして、町に出て情報収集をすることに。今日は、その話で盛り上がった。


― 1月8日(木)

合評
「書き直す前のほうが、勢いがあってよかったように思うのですが」という意見が出た。確かにそうかもしれない。初稿は、作者の思いが込められていることと、荒削りなので力強く感じる場合もある。が、書きたいことが満載状態で、話題があちこちに分散し、どれも中途半端になり、伝えたいことがかよくわからないことが多い。五枚作品の場合、登場人物はもちろん、伝えたいことをしぼり、欲張らないこと。ストーリーを展開させて、お話がおもしろくなるように工夫することが大切だ。
★プリント
五枚童話をおもしろく書くポイント。
★発想の練習
大きな風呂敷包みの中身をイメージする。それぞれの発想の違いに、大いに盛り上がる。


― 12月11日(木)

★合評
作品@ 教室でのイメージトレーニングで生まれた5枚作品。やさしくかわいいお話なのだが、「メルヘン」と「生活童話」のはざまでどっちつかずになってしまっている感じがする。主人公である人間の女の子のお話にすれば、すっきりわかりやすくなるのだが、作者には、「童話」イコール「メルヘン」という刷り込みがあるようで(私も書き始めはそうだった)、毎作、そのあたりがネックになっている。「キツネやお日さまがおしゃべりをするから童話なのだ」というイメージをまず外すこと。誤解しないでほしいのは、メルヘンが悪いわけでは決してない。メルヘンを選ぶのなら、それに徹しなくてはならない。自分の書きたいテーマが、どういう設定にすれば一番よく伝わるかを見極めること。というわけで、メルヘンとファンタジーのちがいなどについて、少しお話をしてみる。
作品A 4回目の提出(書き直し3回目)。作者は、新しいお話もどんどん書いている人なのだが、このお話は童話としての記念すべき第一作ということで、なっとく出来るまで書き直すそうだ。その意欲が、今、教室のみんなを引っ張っていっている。書き直すたびに作品が見えてきている。みんなの意見に対して、「ああ、わかります」と肯定的なので、上達が早い。合評の場で、聞く耳を持つことは、とても大切なことだ。
★公募入選のこつのプリントを配る。
★回を重ねるたびに、楽しい講座になっていくのは、メンバーのおかげだつくづく思う。冬休みのシーズンは、お話の素材に満ちあふれている。休み明けに、いい作品が出揃うことを楽しみにしている。

― 11月27日(木)

★合評
講座が始まった頃に比べると、読解力も深まり、鋭い意見がよく出ている。合評を受ける側の耳も育ち、書き直しにも積極的なのがうれしい。そして教室の雰囲気が和やかなのが、何よりだ。「童話を書くことに出会えてよかったです。楽しくって」という意見を聞き、講座をはじめてよかったなと思う。今日は、二作品を合評する。創作の第一段階をクリアーしたばかりの作品と第二段階をクリアーしつつある作品。どちらに対してもいい意見が出た。
@第一段階クリアーの作品(8枚)は、お話としてのかたちはどうにかできているが、リアリティが欠如しているために、説得力に欠けていた。魅力的なキャラクターの設定。8枚を5枚に。1日で終わるお話に書き直すことで、テンポもよくなると思う。ラストにユーモアの味付けもほしいところ。きっといい作品になると思う。
A第二段階をクリアーしつつある作品は、三年生のお兄ちゃんの視点で始まった物語が、途中で一年生の妹の視点にすりかわっていたことを除けば、ほとんど問題はなかった。欲をいえば、物語の終わり方に一ひねりほしい。作者は、創作ゲームでイメージしたお話を必ず作ってくるという努力家さんだ。8月に入会。すでに4作品ができあがった。いよいよ公募に応募待ち……か。
B創作は、第三段階をクリアーすれば、5枚から10枚童話なら一人で書くことができる。が、公募に入選するには、第三段階をクリアーしただけでは、まだまだだ。あとは、創作のセンスを磨く段階に入る。作品を光らせるには、どうすればいいか。そして、中編、長編へとチャレンジはさらに続く。メルヘンや生活童話、ドキュメント、ファンタジー、SF……。書いているうちに、自分の得意分野が見つかることだろう。
プリントを用意していたが、2作品を合評すると時間がなくなってしまった。プリントを配って、机上の空論を説くよりも、作品を合評しあうことが、上達の早道だと思う。


― 11月13日(木)

★合評
みんなの合評がうまくなっているのに驚く。今日の合評作品についてもいい意見が出た。参考にして書き直せば、おもしろい作品になりそうだ。次回の合評作品が三作出た。10枚、8枚、5枚。どれも、読みたくなるようないいタイトルがついている。三作とも、創作ゲームや発想のイメージから生まれた童話ばかり。教室の雰囲気もとてもいい。
★推敲

余韻が残る文章について。同じことをいっていても、言葉を選ぶことによりと作品がグレードアップすることを例をあげて説明する。
★創作ゲーム(お話作ろう)
今日は、前回のバージョンアップ。いっしょに物語を組み立てていくのではなく、それぞれにチャレンジしてもらうことに。登場人物のカードは、人間だけではなく、動物や物(やかん、ポスト、だるま、スリッパ)など何枚も作ってある。その中から二枚ひいてもらう。「どうした」のカードには、「困ったできごと」「冒険」「おいしい話」「ゆかいな話」「どきどき、ひやひや」など書きこんである。登場人物は「魔女」と「恐竜」、できごとは「こわい話」を引いた人は、そこからイメージがふくらんでいって、幼いころ蔵の中に閉じ込められた話を書くという。
とにかく、書けるところまで書く。行き詰まっても、へこたれないこと。放っておいて、次の創作にかかりましょう。途中までしか書けなかったお話も、頭の片隅に「お話の種」としてストックしておくと、いつか、ひょんとしたはずみにそのお話が動き出すことが、よくあるのです。だから、創作って止められないのです。どんどん書いて、「童話を書く」ということになれるのが一番です。


― 10月30日(木)の講座ダイジェスト

今回、合評作品はなし。この講座は、ほとんど初心者の集まりなので作品の提出にむらがあることはやむをえない。強制はせずに、書けたときに出してもらうことにしている。本来、創作するという作業は、書きたいテーマやお話があって湧き上がってくるものなのだが、何を、どう書いていいかわからない人のために、今日は、みんなで創作ゲームをすることにした。
★創作ゲーム(お話作ろう)

@登場人物の名前を書いたカードを、あらかじめたくさん作っておく。それを裏返して並べて、代表者にその中から二枚を引いてもらう。「男の子」(小学二年〜四年)と「動物」(なんでもいい)だった。
A次に、いろいろな性格を書いたカードを裏向けておく。「男の子」には「やさしい」というカードが、「動物」は、「泣き虫」というカードが引かれた。同じやり方で引いた季節は「冬」。「テーマ」は自由という設定で、お話を作ることになった。「男の子」を「女の子」に変えてもいいし、「動物」を「妹」に変えてもいいことにした。基本的には、「やさしい男の子」と「泣き虫な動物」のお話作りに挑戦してもらう。以前配った、物語を立ち上げるための「履歴書」用紙に書き込むように指導。
Bいっせいにスタート。シャリシャリ鉛筆の音のみ聞こえて来る。みんなの集中力に驚く。お話のダイジェストが30分足らずでできあがった。それぞれ工夫が凝らしてあって、同じ素材で発想したにもかかわらず、どのお話もみんな違っていて、なかなかいい。書けないといっていた人も、見事にまとめてあった。ふくらませるところや、創作のヒントをそれぞれに作品について少しアドバイス。次回はそれを、原稿用紙にうめてきてもらうことに。


― 10月23日(木)の講座ダイジェスト

★合評
書き直し2作を合評する。どちらも3回目の書き直し。作品Aについては、書き直すたびに、不要な部分が削ぎ落とされ、物語が明確かつ立体的に立ち上がっていっている。後少し手直しすれば、公募に出すレベルに達したと思う。作品Bについては、主人公の設定を、2作目で正反対に替えたため、まだ多小ぐらついてはいるが、それでも、おもしろい作品になってきている。
★選考の基準
これからの参考にしてくださいと、出版社から入選者にメールで送られてきた「公募選考の基準」をプリントして配る。今まで講座で言ってきた事とほとんど同じだが、選考者側からの言葉は重い。
★アンデルセンメルヘン大賞の応募要綱
自宅に届いたものをプリントして配る。一流画家が挿絵をかいてくれることや、選考の手順、アンデルセンの誕生日に広島で行われる表彰式の様子など、知っている情報を話す。
★発想の練習
なかなか家ではできないようだ。でも繰り返し続けることが大切。


― 10月9日の講座ダイジェスト

★合評
「新作」を合評する。@おばあさんのキャラクターを個性的に設定しておきながら、その個性を活かせていない。A事実を書くのは日記。創作は、事実をヒントにお話をふくらませなければならない。B登場人物を整理する。C主人公(わたし)が見えない。などなどについて。この作品はキャラクターが面白いので、書き直せば、子どもたちに元気を与えるいい作品になると思う。
★リアリティ物語(生活童話)
の書き方のポイントについて。今日の合評作品に沿って用意したプリントを配って説明する。
★絵本を読む

毎回、絵本または短編を読んでいるのだが、今日は、田島征彦・吉村敬子作の「ななしのごんべ」さんを読む。堺の空襲の話だが、子どもの視点で書かれていて、とても悲しくって、心打たれる。女の子の話し口調でかかれているのも、あたたかくていい。戦争を体験した世代の生徒さんが、神戸の戦災の話などしてくれる。童話の素材は、その人の心の奥に眠っている。それを引っ張り出すのも私の役目だと思っている。
発想の練習
定番になってしまったが、なかなか苦しい。いい発想がでるときも、でないときも。だからこそ、続けなければならない。

― 9月25日の講座ダイジェスト

★合評
「新作」と「書き直し」の二作を合評する。新作は、なかなか勢いがあっておもしろい作品だった。ただ、作者にしかわからない思い込みの部分があることと、タイトルと物語の関連性など一工夫すれば、いい作品になると思う。童話を書く第一段階を「発想」というなら、この作品は発想そのもの。第二段階として、この発想を元に「創作」してもらわなくてはならない。みんなの意見を参考に、ぜひ書き直してほしい。
書き直し作品は、とてもうまくまとまっていたと思う。が、公募に入選するためには、ワンランク上の作品にしなければならない。季節感やテンポ、視点を絞ることなど話し合う。
★達人のテクニック
子ども向けの感想文の書き方「達人のテクニック」(学研)を読んでいて、おもしろいことを発見。それがそのまま創作につながることばかりなのだ。たとえば、「達人テクニックその1」について見ると、
@書きたいことメモを作る
A自分の感想が伝わるようなタイトルを
Bスラスラ書き出そう
C内容をふくらませるには?
D本当に感じたことを素直に書く
更に項目別に詳しく書かれていた。例えば@の、自分が書きたいことをメモるについては、
 ・書き出し
 ・本を選んだ理由(本をテーマに置き換える)
 ・不思議に思ったこと
 ・感動したこと
 ・自分だったらどうするか
 ・結びの文
というふうに書かれている。イラストも入っていて、楽しくわかりやすいので(小学生向きに書かれているのだ~当たり前)、プリントして配る。
★発想の練習
タイトルのつけ方に、バリエーションをつける工夫を提案する。


― 9月11日の講座ダイジェスト

★合評
今日の合評作品は五枚の短編。教室でのイメージトレーニング中に思い浮かべたタイトルを元に、創作した作品。あちこちにオリジナルなアイディアが散りばめてあり、よく工夫されていた。意欲的に作品を書いていく人は、上達が早いと感じた。上達するには、とにかく書くこと。まずは一枚でも二枚でも書くこと。うまくまとまらない場合でも放りなげてしまわないで、それを合評にかければいい。それができるのも、この教室が、みんな書き始めたばかりの人たちの集まりなので、アイディアを出し合って、物語を組み立てていく過程を体験するのも、いい勉強方法だと思う。
★小さな読者を引きずりこむために
プリントを配り、各項目ごとに詳しく説明する。魅力的なキャラクターを描くことはもちろん、読み解く興味をおこさせるために、「葛藤」や「共感」が大切なことは、わかってきたことと思う。今日の合評作品について、横目ごとに、一つ一つあてはめつつ解説。
★発想の練習
イメージトレーニングの結果、町内会でやった運動会のことを思い出した方がいらっしゃった。景品などもユニークな戦前のよき時代を、ぜひ、子どもたちに。


― 8月28日の講座ダイジェスト
★合評
若いお母さんの5枚作品。その場で読んで合評に入る。初めての作品ということだったが、発想もおもしろく、ちゃんとまとまっていて、なかなかいい短編だった。「もう一作書いてきました」ということで、他のメンバーにはいい刺激になったことと思う。一方、合評する側も、だんだん作品が見えてきたようで、終わり方の物足りなさに気がついたり、ファタジーの世界への入りかた、出かたが自然だなどと、ポイントをついた意見が出ていた。
枚数が足りないということで、改行せずに詰めて書き込まれていたが、不必要なところを削って、盛り上げるところは、もっと盛り上げると、一層良い作品になることを、具体的に話し合った。
★作品のシェイプアップについて
推敲のための6つのポイントについてプリントを配る。実際に、短い文章を推敲してもらう。絵を描く方がそろっているので、絵本の文章のシェイプアップについて、絵をつけたら、どれだけ文章が削ぎ落とせるか実例をあげて、読みくらべてみる。
★発想の練習
夏休みでお子さんも参加。楽しく頭の体操をすることができた。

― 7月31日の講座ダイジェスト ―
★合評
書き直しの再合評。第一稿にくらべ、かなりよみやすくなっていた。が、まだまだ削れるはず。登場人物を整理すると、話がすっきりする。削るにあたってのポイントは、主人公の活躍を際立たせるために必要かどうかということに尽きる。脇役の何人かを一人にまとめるのも、コツの一つだ。
★葛藤について
物語を作るということは、葛藤を作るということである。葛藤とは何か。解決の仕方。読み手の子どもが自分のことのように、夢中になって物語の中の葛藤を考えていくには、どうすればいいか、合評作品と照らし合わせて話し合う。
★擬音について
オリジナルな擬音の発想は、創作につながる。そのことを、絵本を読んで具体的に説明。擬音を造語した結果、新しいお話しが生まれるきっかけになる場合もある。
★発想の練習
次回の講座まで一か月ある。今日の「発想の練習」でイメージできたタイトルで、次回までに作品を書いてくることを宿題に。

― 7月24日の講座ダイジェスト ―
★合評
書き直し作品の再合評。ずいぶん整理されていて、読みやすくなっていた。この短編を通じて作者が何を伝えたかったのか、合評しているうちに、やっと本人も明確になったよう。応募に向けて再度書き直しに挑戦するともこと。楽しみだ。
★物語の履歴書作成
物語を書き出す前に、主人公はもちろん、その他の登場人物についても設定(履歴書)をきっちりしておくと、必然的にセリフ、物腰などが決まり、結果、登場人物が物語を運んでくれる醍醐味を味わうことができる。場面の展開などが一目でわかるように記入できる用紙を配布。試みに今日の合評作品についての履歴書をみんなで記入してみる。頭の中でもやもやとしていたものが、すっきり整理できたはずだ、が……。
★再び構成について
構成は大切だが、一度や二度聞いただけでは、なかなか飲み込めないものだ。少し別の角度からまとめたプリントを配り、説明。
発想の訓練は、@いつもの頭の柔軟体操。A絵から物語をイメージする発想法の紹介。

― 7月10日の講座ダイジェスト ―
★合評
作者にとっては二回目の提出作品。一作目と比べて雲泥の差。登場人物もシンプルに、わかりやすくまとめられていた。おもしろく読ませる工夫もじゅうぶん汲み取れた。いかにすれば、ストーリを盛り上げることができるか。期待感、葛藤などについても話す。
一人称と三人称
合評作品が「ぼく」で書かれていたので、一人称と三人称について、プリントを配って、説明。
★前回の宿題、ストリーの後半を考えてくる。は、一人だけ作品として書きあげていた。登場人物の特徴をうまく捉えて後半につなげていっている。「おっ」と思うほど見事だった。後半はオリジナルなので、そこに、新たにご自分で前半を創作してみることを提案。
★母親の誕生日に何を贈るか。ありきたりのものではだめという話で盛り上がる。「でも、わたしは、どうしてもイヤリングがほしい」と現実にこだわる人も。「それじゃ、子どもに手作させて、とんでもないオリジナルなイヤリングをもらうことにしましょうよ」「えーっ、そんなの、つけられへん」。創作は日記ではない。発想は現実を超えてこそ、面白くなるのですよ。
★発想の訓練

少し慣れてきたかな。「だんだん、これをしている意味がわかってきました」という意見も。そうです、これは、創作が現実を超えるための頭の柔軟体操なのです。


― 6月26日の講座ダイジェスト ―
★合評
25歳の若い感覚で書かれた今日の合評作品は、現代の母子像をおもしろく捉えていたと思う。が、5枚では書き足りない部分があり、テーマはもとより、ラストの3行に秘められた思いが、読者に伝わらなかったようだ。10枚に書き直せばいい作品になると思う。
★構成
テーマを伝えるためには、スT―リーの展開をどう組み立てれば、より効果的か、プリントを配り、今日の合評作品に添って考えていく。構成のコツは、最後まで読ませるための工夫にもつながる。
発想の訓練
頭を柔軟にするために、例えば、「ひまわり」という言葉から次々連想していく。どの人も、だいたい10個まできたところで、連想のスピードががたっと落ちてしまう。それは、「ひまわり」という言葉にこだわって、思いっきり飛躍できないからだと思う。20個目にたどりつくには、思いのほか時間がかかるようだ。訓練次第で、どんどん早く、しかも意外な方向へ発想が飛躍できるようになる。
★宿題
物語の前半を配り、後半はどういうストーリー展開になっていくか、それぞれの物語を作ってくるように指導。書けない人は、アイディアだけでもいいことに。
★新美南吉童話賞
今までの入選作品集を配り、審査の方法などについて情報提供。

― 6月12日の講座ダイジェスト ―
★合評

今日の提出作品は体験談だけあって、初めて書いたという作品にもかかわらず、シンプルにわかりやすく書かれていた。場面が絵になって浮かんでくるという意見も出た。が、やはりこのままでは、日記の延長にすぎない。「体験」を「物語」にするための創意工夫について話す。個性的なキャラクターの設定。葛藤の作り方。物語の展開。ラストのもっていきかたなどなど、作品に添って具体的に講義していく。「ただの体験」が「物語」としてふくらんでいく過程がわかってもらえたと思う。「体験」に縛られてはいけない。「体験」を元に、「創作」するということを意識して欲しい。
作者は「ほのぼの」の
公募の切抜きを持ってきていた。その積極性がうれしい。公募に向けて、ぜひ書き直してほしい。
★応募しよう
タイミングよく配ったプリントは「公募しましよう」。公募のための心得は11。@応募要綱をしっかりみるから始まって、Jダブル応募はしないことまで、どれも大切なことばかりだ。
★選者の言葉
9人の選者からのひとことを集める。
@前回の入賞作品とよく似たテーマやモチーフはさける(立原えりか)。
Aタイトル・テーマ(新井満)
Bその人でなければ書けないもの(渡辺淳一)など。
★みんなで合作
幸か不幸か、受講生のほとんどがパソコンを使えないということなので、HPに掲載している「ほのぼの」で佳作入選した「しわ・しわ・しわ」を使う。中盤、「しわ、しわ、しわっと、どこかにしわはないかしら……」というところまでプリントを配る。さあ、このあと、いったいどうなるでしょう?
休憩をはさんで、しばし考えた後。「のばしてほしいしわならあります」と言う意見が出た。もちろん顔のしわ。というところまでは、だれでも考えつく。この後の展開をどうもっていくかが、創作の醍醐味なのだ。この作品を書いて何を伝えたかったのか、それがテーマだと話す。「伝えたいことは二つあります」と、答えをぺろりと言ってしまった。伝わっていたかどうか、受講生に考えてもらえばよかった。ということで、ここでは明らかにしない。
初期の作品なので、「おばあさん」の安売り。良くない例として説明。
★イメージトレーニング
書けない時は、イメージトレーニングをすること。方法は、第一回目の講座のときに、みんなで試みた。そのとき、自宅でもチャレンジするようにおすすめしたのだけれど、みんな忘れている。「えーっ、ひとりでするのですか?」という人も。よし、次回から教室で、ウオーミングアップとしてやってみるか。

                                           
― 5月23日の講座ダイジェスト ―

★合評
初めておばあちゃんになった作者が、将来孫に読ませたいと思って書いた作品を合評。全体に好評だった。タイトルがなかなか面白いので、タイトルにそって、お話しをふくらませるように指導した。
★子どもの心をひきつける童話を書くための8つのポイント

活字離れしている子どもを本好きな子にするために、書き手としてすることはたった一つ。子どもにとっておもしろい作品を書くことだ。それは、簡単なようで難しい。子どもに媚びてはいけない。ふりまわされてもいけない。かといって、大人の考えを一方的に押し付けては、もっといけない。作者の伝えたいメッセージを、うまく織り込みながら、読者である子どもが共感できるように書こう。そのための8つのポイントについてプリントを配る。説明しながら、今日の合評作品と照らし合わせ、チェックする。
参考までに、自作「ぼくの妹」(小学館の教育技術に掲載のミステリー)を音読。
情報交換の場
・参加者の一人が、京都の駅ビルで開催中の絵本の原画展の案内書を持ってきて、みんなに見せていた。
・私は、茨木市で開催予定の「宮沢賢治の銀河鉄道を読む」の出版記念講演のパンフを配る。これは、おすすめ。
・息子さんがJAに入社した人が、公募童話の入選作が掲載された「家の光」を、次回持ってきてくれるそうだ。
講座の場が、情報交換の場になることは、望ましいことだ。
★反省点
前回の合評作品について、「書きなおせましたか?」と聞く。「だんだん違う作品になっていくので、あれはやめました」という答えが返ってきた。意外だった。いい作品になるはずなのに……。作者の意向を聞きながら合評したつもりなのだが、押し付けになっていたのだろうか。ベテランが相手ではないことを再認識して、書き直せるように指導していきたい。

― 5月8日の講座ダイジェスト ―

★合評
五枚の提出作品は、初めて書いたにしては、とてもよくまとまっていた。何より、原稿がよみやすい。これは、とても大切なことだ。人に読んでもらうためにあらゆる場に提出する作品は、手にとった瞬間から評価が始まると思ってほしい。もちろん、一番大切なのは作品の中身だが、面接試験と同じで、まずは身だしなみ(原稿の書き方)に心を配ろう。特に公募の場合は、何千、時には万を超える中から選ばれるということを頭に入れておいてほしい。字をきちんと書くことはもちろん(活字で提出する人は印字の大きさなどに留意)、文字をぎゅうぎゅう詰めにしないこと。「会話」とのバランス、「改行」などを工夫して、まずは目に心地よい原稿に仕上げるように、心がけよう。
★文章の削ぎ落とし方
短編にもかかわらず、盛りだくさんの内容になってしまうのは、「あれも書きたいこれも書きたい」と思いばかりが募ってくる初心者にありがちなことだ。焦点がぼやける上に、あっちとびこっちとびして、何がいいたいのか伝わってこない。その作品を通じて何を書きたいのかをよく考え、テーマを一つにしぼり、それに直接関係のないことは、思い切って削ってしまおう。残った本筋の部分を、いかに楽しく読んでもらうか、物語をふくらませることに創意工夫をしよう。、
★メルヘンの書き方について
合評作品と照らし合わせて、実際に項目ごとにチェックできるように、プリントを配る。
@子どもの願望(できないこと)を、疑似体験できるように書こう。
A現実ではありえないことを、思いっきり飛躍する楽しさを書こう。
B簡素で詩的な表現をこころみよう。
などH項目について、具体的にチェックする。結果、ずいぶんすっきり。しかも余韻が残るストーリーになりそうだ。もちろん、本人が書き直した場合のことだ。
絵本を読む
今日の合評作品のテーマの参考になればと、谷川俊太郎の「とぶ」と、かたやまけんの「おなかのすくさんぽ」を読む。その後、貸し出す。
★創作ごっこ
講座は今回で三回目だが、まだ、どうしても書けないという人もいる。それならと合作を試みる。私の短編「ねずみがみつけたゆびわのおはなし」の前半をプリントしたものを配り、後半はどうなる? とみんなで考える。最初はうーん……と考え込んでいたが、10分ほどのシンキングタイムのあと、文殊の知恵を出し合って、すてきなお話ができあがった。創作する実感を味わえたせいなのか、「次回は書いてこられそうです」と明るい声。そういってもらってうれしい。

― 4月24日の講座ダイジェスト ―

初めて合評する人がほとんどなので、提出作品を合評するにあたって、簡単に合評の仕方を説明する。

★合評に仕方について
(よりよい作品になるために)
@深く A鋭く B暖かく C惜しみなく
「深く・鋭く・暖かく」は勿論のこと、作品を読んで感じたことやひらめいたことは「惜しみなく」伝えることが大切だ。ひらめいたアイディアを自分の作品のためにとっておこうなどという「けちな考え」はおこさないこと。アイディアというものは井戸水をくみ上げるようなもので、コツさえわかればどんどん湧いてくる。「コツをつかむコツ」は、たくさん合評をして、いい意見を出すことに尽きる。情けは人のためならず。惜しみなく意見をいうことは、やがて自分の創作活動に還ってくる。
★合評のしてもらい方
@弁解しないで耳を傾ける Aが、そのまま鵜呑みにしない B必ず書き直す
合評後、「書き直せない」のは、自分の中でストンと心に落ちるものがないからで、その作品を書いて何を伝えたかったのか、もう一度考えなおそう。「書き直さないの」は、怠慢の一言に尽きる。
★合評
「家の光」の公募に向けて書いたという五枚作品を、その場で黙読。その後、合評に入る。それぞれになかなかいい意見が出た。
★五枚作品の書き方について@きらっと光るものはあるか Aよけいな言葉を削るには など6項目について説明しながら、具体的に項目ごとに合評作品をチェックする。書き直せばいい作品になると思う。あとは、本人次第。
★参考までに、「家の光」童話賞を受賞した自作「さむがりやはよっといで」を朗読。
★とっておき「情報ノートの作り方」を伝授する。


― 4月10日の講座ダイジェスト ―

ほとんどが初心者なので、基礎から始めることにする。10年近く児童文学者の吉橋通夫先生に師事していたこと(現在も尚且つ)が、とても役に立つ。師に感謝。

★「原稿の書き方」
★「童話のジャンル」
★「素材の見つけ方」
★「観察の仕方」
★「作品の書き方」
★「夢の実現のための心得」
などについて、それそれ項目をあげて詳しく話したあと、
発想のための「イメージトレーニング」をする。慣れないせいだろう、なかなか難しかったようだ。しかし、これは大切なことなので、電車の中でも自宅でも、ちょっとした時間があれば試みてほしい。
とにかく書かないことには、何事も始まらない。枚数、締め切りなどが決まっている公募に向けて書くことは、目的ができて励みになる。作品を書くにあたり、起承転結だけでは入選しないことなどなど、「公募に入選するノウハウ」についてレクチュアする。

★次回までに、がんばって五枚作品をかいてくること、イメージトレーニングを
してくることが宿題。