大きなくつした 小さなくつした


「いいな、いいな、クマくんはいいな」
リスの子シッポは、クマの子が うらやましくて なりません。
クマの子が クリスマスにつるす、大きなくつしたが、うらやましいのです。
「ぼくだって、あんな 大きなくつしたが つるしたいよ」
お母さんは 笑いながら、
「リスのくつしたは、リスの足に ちょうどの大きさに できているのよ」
といいました。
シッポは 自分の足をながめて、(なんて小さい足だろう)と、ためいきをつきまた。
シッポは、つぎに自分の くつしたをみて、(なんて、ちっぽけなくつしただろう)
と、がっかりしました。
こんなに小さくては、クリスマスプレゼントだって、少ししか 入りません。
リスの子は、(そん、そん、そん)と思いました。
(なんとかして、ぼくの足、大きくならないかな)
ひっぱったり、たたいたり、つまんだりしてみても、
やっぱり リスの足は、リスの足。
きゅうに 大きくなるわけが ありません。
いい考えが おもいつかないまま、とうとうクリスマスイブに なってしまいました。

雪がしずかに ふっています。
どこの家の玄関にも、ドアに 子どものくつしたが つるしてあります。
クマの家には、クマの子のくつした。
キツネの家には、キツネの子のくつした。
シッポの家には、もちろん シッポのくつした。
シッポは、さっきから、そのくつしたが 気になって しかたがありません。
(森で いちばん小さいくつした、それがぼくのくつしたなんだ)
そう思うと、しっぽはなさけなくて、じっとしていられなくなりました。
(そうだ、今のうちに、クマくんの大きなくつしたと とりかえておこう)
シッポは、お月さまにてらされた雪道を、むちゅうで走っていきました。
クマの家のドアには、シッポのくつしたと くらべものにならないぐらい、
とっても大きなくつしたが、かかっていました。
(わあい、くつしたは やっぱり大きい方がいいや)
しっぽは、ドアにかかったクマの子のくつしたを はずそうとして、
くつしたの中に てがみが はいっているのを みつけました。
   
サンタさん、ぼくは 大きいくつしたしか もっていません。
   よくばりだと 思わないでね。
                           マック

クマの子の てがみをみて、シッポは ちょっと 考えました。
(マックは大きなくつしたが いやみたい。 
ぼくは、大きなくつしたが いい……。
うん、やっぱりね)
シッポは うなずくと、クマの子のくつしたを 引きずりながら、
雪道を かえっていきました。
家につくと、シッポは、雪だらけになった 大きなくつしたを、
ドアのとってにかけました。
なかなか いいかんじでした。
これならプレゼントが いっぱい入りそうです。
ベッドに はいったシッポは、朝がくるのが たのしみでした。

シッポは、よくあさ、早くおきて、ドアにつるしたくつしたを見にきいきました。
大きいくつしたには、
プレゼントが いっぱい入っているに ちがいありません。
シッポは のびをして、くつしたを のぞいてみました。
くつしたの中には、はちみつのびんが 入っていました。
「あれ、おかしいな、サンタさんに りんごのタネ をたのんでおいたのに」
がっかりしたシッポは、もう一つ 小さなくつしたが かかっているのに、
気がつきました。
「あ、ぼくのくつした」
シッポのくつしたには、シッポが大好きな リンゴのタネが いっぱいつまって、
ぱんぱんに ふくれあがっていました。
「わーい、ぼくのくつしたには、りんごのタネが いっぱいだ」
でも、よろこんでばかりは、いられません。
「どうしよう、このくつした」
シッポは、クマの子のくつしたをかえさなければ、とおもいました。。
はちみつのビンの はいったくつしたは おもいけれど、しかたがありません。
ひっぱって、ひっぱって、やっとのことで クマの子の家に つきました。
くつしたを もどしたとき、ちょうどクマの子が でてきました。
クマの子は、はちみつのビンをみつけると、うれしそうにぺろっとビンをなめました。
(まにあって よかった)
そこへ、キツネの子が 自分のくつしたをもって、やってきました。
キツネの子のくつしたには、キツネの子が大好きなホシニクが はいっていました。
(クリスマスプレゼントは、くつしたの大きさでは ないんだ)
シッポは それにきがつきました。
シッポのほしいプレゼントは、シッポの くつしたの中。
クマの子のほしいプレゼントは、クマの子の くつしたの中。
キツネの子のほしいプレゼントは、キツネの子の くつしたの中。
そうきまっているのです。
(しらなかった……)
シッポは 自分の小さなくつしたを だいじそうにかかえると、
雪道を まっしぐらに、かえっていきました。