たち

泉北ニュータウンに引っ越してきて、もう二十五年が経った。
その間、我が家に入れ替わりやってきたペットたちは犬2匹、猫10余匹になる。
犬は、それぞれ前の飼主のしつけがよかったせいだろう、ミッキ‐(生後半年でやってきて15歳で没)も、現在飼っているマック(生後一年半でやってきて現在4歳)も、ききわけがよく、かしこい。

猫たちは、どういうわけか毛並みは3パターン。
「キジトラ」、「白と茶のブチ」、それに「シャムネコもどきの灰色」に偏っている。が、性格は、それぞれ違っていて、ふてくされた子もいれば、家族の姿を見るとニャニャニャニャと短く鳴きながら子犬のように走ってくる子、箱があればすぐに入りたがる子、水が大好きな子、抱かれるのがいやな子……、みんなそれぞれにかわいい。



          最近から過去   ★ペット近況スナップ






ちっちゃいちゃん

自治会館で昔遊びの会「竹とんぼ」をしていた。50人ほど集まった子どもの誰かが持ち込んで、そのままにして帰った二匹のうちの一匹。真っ黒の子猫は、その場で貰い手がみつかった。
問題は、この子。我が家にはすでに五匹の猫がいる(犬も一匹)。ご近所の迷惑も考えると、いくらなんでももう飼えない。せめて、貰い手がきまるまでということで、預かった。かわいくて、おとなしくて……。飼いたい気持を抑えるのはつらい。
手分けしてさんざん探しているのに、貰い手が見つからない。万が一のときは、と半ば覚悟を決めかけたとき、泉大津市で貰い手が決まった。ほっとした。貰われていってしばらくは、さみしくて、「ちいちゃいちゃん、どうしてるやろね」と、家族で言い合っていた。

(写真左は、だれにでも友好的なてる姉ちゃん)




ちゅん(ひよ)
(散歩中、犬のマックが巣から落ちたひなをみつけた。すりえをやっているうちに、手乗りになってしまった。昼間は外で自由にとんでいて、夕方、「ちゅん〜」と呼ぶと帰ってきた。夜は家の中のかごで寝た。肥満になりすぎて遠くにいけなかった?


                          さ く ら(性別不明)

マックが散歩中に、ぐいぐい引っ張っていく。しかってもきかない。と、大きな桜の木の下に、
必死で鳴いている子猫がいた。生まれたばかりで、へその緒がついていた。もちろん連れて
帰った。スポイトでミルクをやり、あんかを出して暖めた。ほかの猫に引っかかられないように、
ゲージに入れた。二度死にかかった。ぐったりしたので、あわてて獣医さんに連れて行った。
一度目は助かった。が、二度目は助からなかった。あまりに小さすぎたと獣医さんはいった。


夫の足の間にいるのが、さくら。発見者のマックが心配そうにのぞいている。
                            



しん(めす)

下の娘がシンガポールに発つ雨の朝、家の前の溝で、まるで歌でも歌うようにだみ声で鳴いていた。シンガポールのシンと雨の中でシンガーソングしていたことから、「しん」と名づける。
小さいころは、わずかに先輩の「てる」とよく遊んだが、現在は、ほとんど外にいる。ふとんにもぐりこんで甘えていた子猫時代とは別猫のよう。
すごい食欲。自立心旺盛(えさの缶など、自分であけて自給自足していることも)。迫力のある鳴き声。どでんと重い。透き通ったブルーの目が、けっこう鋭い。




てる(めす)

生まれてすぐに、テルモ注射器の箱に入って、我が家のガレージに捨ててあった。ミルクと哺乳瓶もそえて。それは、それは、小さかった。夫が、手塩にかけて育てた我が家の、箱入り娘。

お風呂場が大好き。水も平気。泳ぐこともできる。なんでも文句をいわずに食べる。
ふだんは無口だが、寝言をいう。それがかわいい。

何をしても許されるのは、人徳ならぬ猫得か。魚をひいていく姿が悪びれがないと、目を細めているのは、だれ?

大事に育てられたせいか、こわいものがない。車が通っても平気で道路に寝ている。セールスマンやチラシ配りの人など、知らない人にも平気で抱かれているので、ちょっと心配だ。




マック(おす)

お母ちゃんはレトリバー。お父ちゃんは?
お母ちゃんのやさしさと、お父ちゃんのおっさん顔を受け継いでいる。毎朝夕、一時間のお散歩をさせてもらっている幸せ者。冬場、日が暮れたら家の中に。食卓のそばで、おねだり。
ハッピーハウスで作ってもらった立派な迷子札をつけているが、門が開いていても、勝手に外に出たりしない。かしこい。




のらら(めす)

迷い込んできたときは、すでにおとな。キジトラに茶色が混じっていて、見た目はかわいいとはいえない。が、外から帰ってくるとき、ニャニャ‐ンと鳴きながら、子犬のように走り寄ってくる。抱き上げると、砂をいっぱい入れた人形のようにずしりと重くしだれかかってくる。大食漢。手がかからない。


はな (キジトラ・めす)
車で出かけていた夫が、信号待ちで拾ってきた。「きー坊とちがうか?」。キー坊というのは、一年後ほど前にいなくなった猫だった。同じキジトラでも、顔つきがまったくちがっていた。キー坊は、素直さが顔に現れていた。夫が拾ってきた来たこの猫は、口元が、いかにも不服そうにとんがっていた。「このまま放っておいたらら轢かれてしまう」という夫の言葉にほだされて、飼うことになった。案の定文句たれの猫だった。それがおかしくもあり、かわいかった。避妊してそんなにたたないうちに、突然死んでしまった。死因はわからない。はねられたような、外科的なけがはなかった。花を飾って弔ったが、死んでからも口もとをとがらせていた。「なんで、死ななあかんねん」と、不慮の死に文句をいっているようだった。



ちゃー(おす)

近所のお嬢さんが子猫を三匹拾ってきた。そのうちの一匹が、今にも死にかけていた。しかも、ぶさいくだった。どうせなら、かわいい子猫をもらってくださいといわれたが、「ほかの子は、貰い手があるでしょ」と、あえて死にそうな子をもらった。スポイトでミルクをやって、かわいい子に育った。ある晩帰ってこなかった。翌朝、夫を駅まで送ろうと表通りに出たとたん、はっと身がひきしまった。
「もしかしたら……」
夫が車から飛び降りた。やはり、ちゃーだった




キー坊(キジトラ・めす)

夜、散歩をしていると、どこからともなく猫の鳴き声。必死で鳴いている。どこで? あたりを見回してもどこにもいない。溝に落ちてしまったのでは、と這いつくばって、溝をさがしてみる、いない。草むら……にも、いない。どこに? ふと上をみあげると、木の上に小さな猫が。何かに驚いて木に登ったものの、降りられなくなったみたい。「よしよし、待っててね」 木にしがみつき、ガードレールに登って、やっとのことでおろしてやる。トレーナーの中に入れると、ごろごろいう。もう捨てられない。木の上にいたから、キー坊。おとなしくて、ひとなつっこくて、とてもかわいい。黄色い首輪がよく似合った。が、突然、かき消えたようにいなくなった。「あんなにかわいいんやもん。だれかにかわいがってもらってるにきまってる」。そう思い込むことで、悲しみから立ちなおった。   



ごん(おす)

ちっちの子ども。アメリカンショートヘアーのようなしま柄が、なんとも高貴な感じの子猫だった。

知り合いにもらわれていった。とてもかわいがられて、先輩のねこちゃんとも仲良く暮らしている。

そら(おす)

チッチのもう一匹の子ども。煙のような灰色の毛並み。目が吸い込まれそうな空色だった。
ひもにつないで飼ってみたが、続かなかった。そしてある日、帰ってこなかった。三日間、「そら、そら」と探し歩いた。ご近所の友人が、犬の散歩のときに見つけてくれた。道向こうの溝で、死んでいた。突然の死に、声をあげて泣いた。


ちっち(めす)

元のらちゃん。裏の物置で子猫を生んだ。赤ちゃん猫を家の中で保護したので、つられて入ってきた。ひどくびくびくしていて、二年間は逃げ回っていた。おとなしいが、けっこう悪い。障子を破るのも、棚の上の物を落とすのも、いつもちっち。羽根のように軽い。モデル猫のようにかわいい。最近はすりすりしてくる。

下の写真は、避妊手術をしたあと。子猫のそらと。


リスのムイニ−

下の娘がまだ小さかったとき、どうしてもほしいとお小遣いをためて、デパートで買ったのがムイニ−ちゃん。名前の由来は、その日が」6月12日だったから。かごから逃げて、つかまえるの大騒ぎ(猫がいるので)したことも、たびたび。神社の境内にしいのみをとりにいったり、りんごの種が好きで、りんごをせっせと食べたことも。世話をしきれず、知り合いにリスをたくさん飼っている人がいて、もらっていただいた。



ツバメ

我が家のガレージにツバメが巣をつくった。毎年五月になると、シャッターを下ろしたガレージの前で、ツバメが行ったり来たりした。シャッターをあけると、待ってましたとばかり、巣作りをはじめる。広い日本。どうして、ここがわかって、かえってくるのだろう。ヒナが巣立って、電線に並んでいる姿を見るのは、うれしかった。

下の娘がつばめの観察をして、理科展で入選したこともあった。

5年〜6年は、毎年来ていた。その間、ガレージには車を入れないようにしていた。が、ある日、とうとう巣が猫にやられてしまった……。それ以来、ツバメは、やってこなくなった。

それにしても、ツバメの記憶というのは、どうなっているのだろう。

鏡で巣の中を。ひながみえる。





めめ(ミルクでうすめた紅茶のような毛並み・めす)
飼い猫一号

15年前、小学生だった上の娘が、目のつぶれた子猫を拾ってきた。使い古した台布巾のようによれよれだった。熱いお湯で目の膿を拭き取って、洗面所で体を洗ってやる。ぷーんと匂った。
「このままやったら死んでしまう」
娘の言葉にほだされて、飼うはめに。
過保護というか、飼いなれていなかったというか、子猫を家においたまま出かけるのが心配で、おしめをあてて、ポシェットに入れて、首だけだして、連れ歩いた。
成長とともに目も治り、とても美人の猫に成長してくれた。
アイコンタクトができる。人間の言葉もよく理解している。

15年経ったこの夏は、二階の吹き抜けの梁にあがったまま、頑なに下に降りてこなかった。ごはんも二階で、トイレも二階に設置した。冬になりやっと下におりてきた。

呼べば返事もするし、話しの内容も理解しているように思えることも、しばしば。えびが大好物。「えび」という言葉への反応は素早い。ここ数年、一歩も外にでなくなった。

ミッキ‐(雑種・おす)

二人の娘が3歳と1歳のときに、風邪をひいて外出できないときがあった。退屈していた折も折り、ミニコミ紙で、「もらってください、かわいい子犬」という通信欄を見た。近くなので衝動的にもらいにいった。
子犬は、すでに中犬になっていた。
もらってきた犬を一目見たおばあちゃんが、「グロテスクな犬。顔がでかすぎる」といった。

たしかに……。顔はでっかく、真っ黒だった。よくいえば、ミッキマウスに似ていた。つけられた名前は、ミッキ‐。

おなかの長い毛が地面につくほど、足が短かった。「ミッキ‐が聞いたら気を悪くするから」と娘たちがいうので、「短足」という言葉は、タブーだった。
無駄吠えしなかった。猫にも、人間の子どもたちにもやさしかった。
15歳。老衰だった。グルメで好き嫌いが多かったが、最後は、ぼけてしまって、ひたすら食べた。一人でトイレができなくなり下半身を持ち上げてやらなければ、ならなかった。歯の間に長い毛がからまって匂った。それをとるのが、一苦労だった。

お寺で葬儀をあげる日、次女が「身内に不幸があった」といって学校を早引けしてきた。物心ついたときから家にいて、幼稚園の送り迎えも、友達と遊ぶときもいつも一緒だったミッキ-は、確かに身内にちがいなかった。

                     九官鳥のきゅうちゃん

おばあちゃんがおばさん宅からもらってきた。雨戸の開け閉めの音や、犬の鳴き方もまねた。おもしろかった。朝は、庭に出してホースで水をかけてやる。世話はもっぱらおばちゃんがしていたが、受験生のいる近所のお宅から「お宅の九官鳥もたいがいにうるさいですね」といわれ、あわてて遠縁にもらってもらうことに。

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